人間の心理

心理学から紐解く人の心理

「二度と起きてほしくないと思うこと」

<追い詰めた謝罪会>
教育委員会は大ウソつき。

いじめた人を守ってウソばかりつかせる…

生徒いじめ自殺の謝罪会で加害者側が被害者糾弾、認定された二次被害が先月埼玉であった。
昨年の9月、埼玉県立高校の1年生だった小松田辰乃輔くん(当時15歳)が遺書を残して川口市のマンションから飛び降りた。

小学6年生から始まったいじめに加え、学校の対応による「二次被害」が自殺を引き起こしたという。

その最たるものが、加害者による謝罪の場となるはずだった「謝罪会」で、加害者側から浴びせられる「人のせいにするな」「お前のせいだ」などの信じられない言葉。

母親は学校は何もしてくれなかったと訴え、学校の不十分な対応により、なんと「謝罪会」は逆に被害者を糾弾する場になってしまう。

<くるしいと何度も訴えていた>

学校に行くのがこわいと届かなかった辰乃輔くんの訴えに、くるしいくるしい…と書かれたノートがある。
辰乃輔くんは小学6年生の時に所属していた地元の野球チームや、中学1年生で所属していたサッカー部などで仲間外れにされる、物を壊されるなどのいじめを受け、少なくとも4回自殺未遂を繰り返す。

軽度の知的障害があった辰乃輔くんは、いじめの被害を主にノートに記して教師などに繰り返し訴えた。

ノートには、学校には行きたいがいじめられるのが怖い、という辰乃輔くんの複雑な思いが書かれていた。

その内容は「学校に行くのがこわい。」

「このきもちは、だれにも分からない。」

「ぼくの生きている意味はあるのかな?」
「くるしいくるしいくるしいくるしいくるしいくるしい。」

<教師の不十分な対応>
しかし、ノートを受け取った教師らはノートそのものの信ぴょう性を疑い、十分な対応をすることはなかったという。

辰乃輔くんの母親の話す当時の学校側の対応内容は、

学校の先生たちは障害という部分を疑って、辰乃輔がそんなものを書けるわけないだろうとか、親が書いたんだろうと言われる。

本人の苦しさを学校側は受け止めてくれず、すごく遺憾でしかないですとコメントしている。
辰乃輔くんが残したノートは10冊以上にも上り、しかし、このメッセージを学校側が真剣に受け止めることはなかったのだ。

<学校による二次被害を認定>

辰乃輔くんが死亡してから4年、第三者の調査委員会による報告書がまとめられた。
自殺の主な原因とされたのがいじめといじめ申告後の二次被害だった。
つまり、いじめを訴えたがゆえに、さらに中傷にさらされたり、孤立を深めるという二次被害を深刻化させたと認定。

報告書は、学校側が十分な対応をしなかったために辰乃輔くんが非常に大きな精神的苦痛を受け、それが数年間にわたって継続したと指摘。

<謝罪会が被害者の紛糾の場に>

二次被害として認定された中のひとつ、学校が設定した謝罪会は、中学3年の6月、加害者側の父親と祖母、辰乃輔くんと母親が学校に集まった。

本来であれば、そこでは加害者側が謝るはずだった。
辰之輔くんはこの前の年の始業式の日、飛び降り自殺を図り、一時意識不明の状態になり、この4回目の自殺未遂以降、辰乃輔くんは車いすでの生活が続き、精神的にも追い詰められた状態が続いていたという。

しかし学校の謝罪会は逆に、加害者側がその自殺未遂を糾弾する場となってしまう。

<メンタルを完全に破壊された瞬間>

その時の生々しい音声が残されている。

加害者祖母「何を希望してるのよ」
辰乃輔くん「謝ってほしくて」
加害者祖母「ふざけるんじゃないよ、あんた」
加害者父親「はっきり言おうか、その足になったのは君が飛び降りたからだ」
加害者祖母「それを人のせいにするんじゃないよ」
辰乃輔くんは約1時間にわたり、加害者側に責められ、担任、教頭、別の教師の3人も、誰一人として制止しようとしなかったという。
耐えられなくなった辰乃輔くんは大声を上げた。そして、先生に連れられ、教室を後にする。

一時間以上に及ぶ「謝罪会」の音声は途中から加害者側が物を叩いて大きな音を鳴らし辰乃輔くんを委縮させるなど、想像以上に辰乃輔くんを責め立てていた。誰も止めないのか、聞いている取材者でさえ心苦しくなったという。

<生徒一人守れない屁理屈>

音声記録の加害者側の発言から察するに、学校から会の趣旨についてきちんと説明を受けておらず、自分の子どもがいじめの加害者だと納得せずに来ていたそうだ。
つまり、学校側は謝罪の場を作って当事者を引っ張り出すだけで「中立的な態度」を理由に辰乃輔くんが一方的に責められている状況を放置した。

これは、もう最悪な展開だろう。
学校としての責任を放棄して、当事者だけに解決を任せる、無責任な態度でしかなく、いじめについて加害者に納得してもらう努力もせずに安易に謝罪会を開いたことが悲劇に繋がったとしか思えない。

<どんなに辛かっただろうか計り知れない>

謝罪会以降、辰乃輔くんはその時の光景がフラッシュバックするようになり、夜も眠れなくなり、夜中に突然、家を飛び出そうとすることも多く、母親は辰乃輔くんと自分の足をひもで結んでまでして寝た。

そして辰乃輔くんは最後まで、謝罪会で味わった苦痛を次のようにノートで訴え、飛び降りた。

「また、いやな夢を見た、人のせいにするなと言われた夢を何度も何度もたくさん同じ夢を見る」
「くるしいくるしいくるしい」
当事者の仲裁のために学校で設定された「謝罪会」が逆に完全に辰乃輔くんを死に追いやる結果を招いた。

<まとめ>

そもそも軽度の知的障害があることを初めから軽視している、謝罪会で本人が加害者の親から面と向かって責められ、どんなに辛かったかと思うと胸が締め付けられる思いだ。

学校や教育委員会には辰乃輔くんのいじめにおける教訓を活かし、いじめを訴えた側がそれによりさらに責められるようなことが起きないよう、被害生徒に寄り添った対応をすると誓ってほしい。

残念ながら、いじめはどこでも起こりうることであり、今も何処かで多くの生徒が苦しんでいるのだ。

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