「妬み」は人間の最も原始的な心理で、遠い昔から心に潜む相当な悪玉の源だと考えられてきた。
<他人と自分を比較する>
例えば仕事を先延ばししてばかりで、計画どおりに物事が進んだ事が無い役職の人がいる。
一方で、同じ職場にはそれをやってのける同期入社の職員がいる。
その職員が役職に就くことになったとする。
でも先の職員がまだやる気があり、これまで一生懸命やってきた自負もあるのに、何故この人事異動になるのかと思ってしまう。
つまり、誰かと比較しながら自分の能力や存在価値を値踏みしている。
他人と自分の比較がやめられない。
自分よりも優れた能力や魅力を持った、同じ職場の能力者の存在に気づいた時からその存在を意識し始めてしまうのだ。
<たったひとつの厄介な感情>
やがてこの妬みは、職場全体の仕事が停滞する「たった1つの厄介な感情」となり「職場の雰囲気が悪い」「上下関係がうまくいかない」「チームの生産性が上がらない」という現象に向かって行く。
こうした組織の人間関係の問題を、心理学、脳科学、集団力学など世界最先端の研究で解き明かした『武器としての組織心理学』が発売された。
著者は、福知山脱線事故直後のJR西日本や経営破綻直後のJALをはじめ、数多くの組織調査を現場で実施してきた立命館大学の山浦一保教授。
「妬み」は人間を非合理的な行動に駆り立てる感情の中で、最も厄介なのだ。
<上方比較>
冷静に考えれば、友好的に手を組んだ方が合理的な選択で、より高いレベルの仕事と成果が得られる可能性があるのに。
しかし、上方比較(自分よりも優れた人と自分との比較)をすることによって劣等感に苦しめられてしまう。
そうなると実際にとる行動は、困っていても手伝わないし、肝心な情報も教えない。
意地悪で非倫理的な対応で、足を引っ張る結果を招いてゆく。
この様な関わり方では、人間関係がギクシャクしたり、職場全体のパフォーマンスが滞ったり、誰一人として得をすることは無い。
<まとめ>
この著書は、20年以上におよぶ研究活動にもとづき、組織に蔓延する「妬み」「温度差」「不満」「権力」「不信感」といったネガティブな感情を解き明かした画期的な1冊だ。