<エビングハウスの忘却線>
エビングハウスの忘却曲線はプロシアの心理学者、エビングハウスが行った「無意味な綴りを暗記させたあとの保持率」という実験結果であり、再学習による忘却防止の可能性を指摘している。
具体的な調査結果は以下の通り。
20分後には42%を忘却し58%を覚えていた。
1時間後には56%を忘却し44%を覚えていた。
1日後には74%を忘却し26%を覚えていた。
1週間後には77%を忘却し23%を覚えていた。
1ヶ月後、79%を忘却し21%を覚えていた。
記憶してから1日の間に急激な忘却が起こるが、その後の忘却は緩やかに起こるといわれている。
<心理学の過去は長いが歴史は短い?>
心理学史に限らず学問史や歴史にとって最も重要な問いの1つは、ある事柄の始まりをどこにみるかという事だという。
どんなに歴史嫌いの人でも「いい国1192作ろう鎌倉幕府」は知っている。
ところが現在では源頼朝が守護地頭の任免権を得た1185年こそが「始まりの年」とされ、更に、ある1つの出来事に注目するよりも,プロセスの問題として鎌倉幕府の成立を考えるようになって来ているという。
<心理学の場合>
近代心理学が成立した年としては1879年があげられ、この説の問い直しは行われているものの,この時期のドイツを中心に新しい心理学が学範(ディシプリン)として成立した事はかなり確実らしい。
その約30年後にエビングハウスが1908年に出版したAbriss der psychologie(心理学要論)の冒頭に緒論として心理学史が講じられているそうで、その冒頭のタイトルが「心理学の過去は長いが歴史は短い」となっている。
<まとめ>
エビングハウスの過去との決別宣言は同時代の多くの人が共有した「心理学が自然科学の影響を受けつつ1つの新しい学問になっていった」「その中心はヴントだった」「応用領域も広がっていった」という雰囲なのだそうだ。
エビングハウスは1908年の時点で、過去と歴史を分けることを宣言、過去との決別をする。
新しい心理学の成立を数十年前にさかのぼって宣言した事でもあったのだという事らしい。